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井戸ポンプ長持ちさせるメンテナンス

井戸ポンプを十年以上安定運転させる鍵は「使用後の微調整」「周期点検」「記録管理」の三層を切れ目なく重ねることに尽きる。まず日常では運転音と振動に耳を澄まし、起動から定格吐出に達するまでの時間が普段より長く感じた時点でインペラ摩耗や逆止弁の砂噛みを疑い、同時に圧力計の針ブレを確認してキャビテーション兆候を掴む。気づきがあれば即座に電源を落とし吸込ストレーナを分解清掃し、再組付け時にパッキンへ食品機械用シリコングリスを薄く塗布して気密を回復させる。この初期対応だけでポンプ寿命の三割は延びるとされる。週次では電源遮断後に端子台の締付トルクをドライバーで再確認し、緩みがあれば規定値に戻すことで発熱と絶縁劣化を抑制できる。併せてジェットポンプならノズルとベンチュリを逆流洗浄して微細砂を抜き、高低差八メートル以下でも吸込負荷を数%改善できる。月例点検では膨張タンクのエアプレチャージをゲージで測り、設定圧の九割を維持するよう空気を補充し圧力スイッチの切入・切出差圧を再調整する。ここでスイッチボックス内に結露があればシリカゲルを更新し接点酸化を防ぐ。三か月ごとに実施すべきは揚水管の逆止弁チェックで、止水後三十分放置し圧力が一定なら良好、低下していれば弁座の摩耗を示すので即交換する。半期ごとには井戸ケーシングを二百ppmの次亜塩素酸ナトリウムでショッククロリンし鉄バクテリアをリセットし、サブマーポンプの場合は絶縁抵抗計でモーター巻線を測定し一メグオームを下回れば早期オーバーホールを計画する。冬前には吸込配管と吐出配管の最低部分に凍結防止ヒーターテープを巻き、外気温が零度を下回る予報の日はサーモスタットで自動通電させる設定に切り替えると膨張破損を防止できる。年次総点検では電流鉤形メーターで運転電流を測り銘板比一一〇%を超えていないか確認、超過時はベアリング摩耗かライン電圧低下を疑って電源ケーブル断面積を増強する。さらにポンプを一度引揚げ、軸シールとOリングを全数交換しシャフトに微細傷があればクロムメッキスリーブを圧入することで漏水によるモータ短絡を根元で遮断できる。保守記録は「作業日・累積運転時間・圧力・電流・交換部品」を表計算に入力し、異常値が二回連続でしきい値外に振れたらオーバーホール基準とする運用ルールを定める。加えて予備品として機種専用逆止弁、メカニカルシール、圧力スイッチ、200Wクラスのインバータ基板を常時在庫し、停電時に備えて1.5kVA以上のインバータ発電機と絶縁トランスを用意しておくと突発停止のリスクを最小化できる。最後に井戸蓋周辺の草刈りと排水勾配維持を春秋に実施し雨水逆流を防げばケーシング外部腐食を抑えられ、これら全工程を継続することで初期設置費の回収を終えた後も安定した水源として長期にわたり家計と環境負荷の双方を軽減できる。

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