エアコンや給湯器のカタログでよく見かける「ヒートポンプ」という言葉。空調設備の省エネ技術だと聞いたことはあっても、何をしているのかまでは知らない方が多いのではないでしょうか。この記事では、ヒートポンプの仕組みと、少ない電気で大きな熱を得られる理由、知っておきたい弱点を、身近な例を使って説明します。
ヒートポンプとは
ヒートポンプは、熱を低いところから高いところへくみ上げて運ぶ技術です。水をくみ上げるポンプになぞらえて、この名前が付いています。
熱は本来、温度の高いほうから低いほうへ流れます。ヒートポンプはこの流れに逆らい、冷たい側から熱を集めて、暖かい側へ送り出します。エアコンの冷房も暖房も、この技術で動いています。現在の空調設備の多くは、ヒートポンプを利用しています。
知っておきたいポイント
1. 冷媒の性質を使って熱を運ぶ
熱を運ぶのは「冷媒」と呼ばれる物質です。冷媒には、圧縮すると温度が上がり、圧力を下げると温度が下がる性質があります。自転車の空気入れを使うと先のほうが熱くなるのは、空気が圧縮されたためです。
ヒートポンプは、冷媒の圧力を下げて外の空気より冷たくし、外の空気から熱を吸収させます。次に圧縮機で冷媒を圧縮して高温にし、その熱を室内に放出します。これが暖房です。冷媒の流れを逆にすれば、室内の熱を集めて外に捨てる冷房になります。
2. 使った電気より多くの熱を得られる
電気ヒーターは、電気をそのまま熱に変えます。得られる熱は、使った電気の分までです。
一方、ヒートポンプが電気を使うのは、主に圧縮機を動かして熱を運ぶためです。熱そのものは空気などから集めるので、使った電気のエネルギーより多くの熱を利用できます。これが省エネといわれる理由です。どれだけ効率よく運べるかは、機種や運転条件によって変わります。
3. 燃料を燃やさずに暖められる
ヒートポンプは、その場で火を使いません。室内の空気を汚さず、火災の心配も減らせます。また、燃料を燃やさないので、機器から直接排出される二酸化炭素を抑えられます。
4. 空調以外にも広く使われている
冷蔵庫は、庫内の熱を外に出すヒートポンプです。お湯を沸かす給湯器、衣類乾燥機、床暖房などにも利用されています。熱を集める相手も空気だけではなく、地中の熱や水の熱を使う方式もあります。
注意点・よくある勘違い
外が寒いほど暖房の効率は下がる
暖房では外の空気から熱を集めます。外の気温が低いほど集めにくくなるため、能力や効率が落ちます。寒い地域では、低い気温でも能力を保ちやすい寒冷地向けの機種を選ぶことが大切です。
暖房が一時的に止まることがある
寒い日に暖房を続けると、室外機の熱交換器に霜が付きます。霜が増えると熱を集められなくなるため、機器は霜を溶かす運転(霜取り運転)を自動で行います。この間は暖かい風が止まりますが、故障ではありません。
「熱を生み出している」わけではない
使った電気より多くの熱が得られると聞くと、エネルギーが増えているように感じるかもしれません。実際には、もともと空気の中にあった熱を集めて移動させているだけです。集める先に熱がなければ、効率は上がりません。
室外機の環境が性能を左右する
室外機は熱を集めたり捨てたりする場所です。まわりに物を置いたり、雪で埋もれたりすると、空気が流れず効率が落ちます。風通しを確保し、冬は積雪への対策をしておきましょう。
まとめ
- ヒートポンプは、熱をくみ上げて運ぶ技術
- 冷媒を圧縮・膨張させて、熱を集めたり放出したりする
- 電気は熱を運ぶために使うので、使った分より多くの熱を得られる
- エアコン、冷蔵庫、給湯器など幅広い機器で使われている
- 外気温が低いと暖房の効率が下がり、霜取り運転が入る
仕組みを知っておくと、空調設備を選ぶときや、冬の暖房の動きを理解するときに役立ちます。